こんにちは、まゆでっす(*'ω'*)ノ
ここはまゆが書いた小説みたいなものが置いてある所です。

マビノギのメインストリームをメイン、サブで
やっていく過程で、まゆが感じた事や実はこうなんじゃ？
とか思った事を、ちょうど末っ子のG1を開始したのをきっかけに
ちょっぴり物語り仕立てにしてみようかなぁ…と思いました。

今まで撮りためた、SSを元にストーリーを進めていきますが、
まゆにとってはメインストリームはこんな風に
感じられてます～みたいな感じです。

他のマビ系ブログ様とかサイト様だと、
小説　という形で書かれているような感じですが、
これはそんな壮大なものではなくて、
ちょっと形を変えたプレイ日記のような…

末っ子のG1なので末っ子目線で。
もし自分が末っ子だったら…みたいな感じです。
あとはまゆの妄想なので…

寒い…と思ってもスルーで…お願いします…<(_ _)>

つづきはこちら

タイトルにした「one and only」というのは
「かけがえのない人」という意味です。

メインストリームを通して、根底に流れるのは
この「かけがえのない人」を失ったり、守ったり、
求めたりするそれぞれの登場人物の心かなと
まゆは思ったのでこのタイトルにしました。

思いついた時に、書いていっているので
完結するかどうか…と言う感じですし、
こっそりとＵＰしていたりするので、気がついた方だけ
読んでいただければ…

マビノギの世界観だけは壊さないような文章に
しようと思っています。

感想等あれば頂けると喜んでまたアップするかと思います。

生暖かい目で見守ってください…<(_ _)>

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いつからか、そこはみんなの集まる場所。

丘の上の、あったかい場所。

じいちゃん、今日も沢山お話してね。

つづきはこちら

「ゴブリンの魔符…？　キアダンジョンのゴブリンを退治したのか？」


動物を操る魔符をじいちゃんに見せると、
驚いたように、ワタシと魔符とを見比べる。

「ちいねぇのお使いじゃないよ。
　ぜんぶワタシが取ったんだよ。」

いつもはちいねぇのおつかいで、このうす緑色の魔符を
持ってきてたけど、今日は違う。
自分で採ったんだもん。

じいちゃんはもう一度魔符を見て、
歯ブラシみたいな白い眉毛の片方を少し上げてワタシに視線を移す。
ごつごつしわしわした手がワタシの頭をなでた。
せっかくダンジョンから出て、髪をとかしてきたのに…

「そうか、そうか。茉由も一人前の戦士になってきたのだな。」

「初めて行ってみたの。
　ちいねぇがワタシなら一人でも行けるだろうって」

「そうか、うん。そうか。」

わしゃわしゃってワタシの頭をまたなでる。

じいちゃんはこの村の村長。
だけどみんな村長なんて言わない。
大人は、「たてまえ」とかいうので、じいちゃんの前では
村長って言ってるけど、普段話す時はみんなじいちゃんだ。
それにみんなじいちゃんが好きだ。
だって、じいちゃんはおうちの前にある木みたいに
とってもどっしりしてて、だけどやさしくて、あったかいから。

ワタシもこうやって魔符を渡しに行くお使いを進んでやってたのは、
じいちゃんに頭をわしわしってしてもらいたかったから。
きっとじいちゃんのおうちの中にいる変な猫もどこにも行かず、
ずっといるのは、じいちゃんのわしわしが大好きなんだ。


ワタシが見せた魔符を数えて、じいちゃんはいつものように
少しばかりのお金を渡してくれた。

「無駄遣いしてはいかんぞ？」

「…おおねぇにも言われた…」

ワタシがそう言うと、じいちゃんは「はっはっはっ」と
本当におかしそうに笑った。

「真唯の言いそうな事だな。」

「おおねぇはうるさいんだもん…」

「それも茉由の為を思っての事。素直に聞いておればよい。」

わかってるけど。

「そうか…もうキアダンジョンへ一人で行くようになったか…」

「この前は、ダンバートンの北の方にある、
　もっと大きいダンジョンに行ってきたよ！」

「ほぉ…」

「んとねー、悪い女の魔族が1人でいてて、
　入っていく人を誘惑するんだって。
　何人も退治に行ってるけど、かえって来ないからって、
　アランウェン先生から行ってみるか？って言われたの」

本当は、一人じゃないとダメみたいだったんだけど、
初めて行くところだし、どうしようって思ってたら、
おにぃちゃんがついて行ってくれたんだけど…
内緒にしちゃお。


「ふむ…サキュバスか…、途中で断念したのか？」

「ど、どうして？」

「確かサキュバスは一人で訪れる冒険者だけを狙うはず。
　さすがにまだ茉由は一人では無理であろう？」

何でも知ってるんだ…。
何も言えず、でもじいちゃんの顔も見れないワタシを
じぃっと見つめてじいちゃんは目を閉じて少し上を向く。
あー、じいちゃんには隠しても無駄だなぁ…。

「おそらく…うむ…途中までは小彪がついていったか？
　それとも豹丸がついていったか？」

「………」

見上げるワタシにニカっとじいちゃんは微笑んだ。
うわ…昔いたずらを見つかった時もこんな顔されたなぁ…

「姉の真結も同じような事いいよったからの。」

「ぅ。」

「それに真結は小彪と、もう一人熟練の戦士に
　手伝ってもらっておった。」

「ぇー！ずるいー！」

「怒るな怒るな。その後ちゃーんと一人でも行っておったぞ。」

「ぅ。」

ちいねぇは、要領がいい。
なにをやるのも一人なワタシと違って、
やさしいおにぃちゃんがいる。
いっつも一緒だ。
なーんだ、最初は手伝ってもらったんじゃない。
ちぇ。



「小彪がついていったのならば、サキュバスは退治できたのだな。」

「うん。アランウェン先生からご褒美ももらったよ」

「そうか、そうか。強くなったな。」

「うん。もっと強くなるよ。」


ワタシがそういうと、じいちゃんの瞳に一瞬影がよぎった。
なんだろう？あんな表情初めて見る。

「じぃちゃん？」

「おお、すまんすまん。そうじゃ茉由、頼みを聞いてくれんか。」

「ん？どしたの？」

じいちゃんは少し辺りを見回して、ワタシと目があうように
しゃがんで肩を持った。

「この村の北にはアルビダンジョンがあるのは知っておるな？」

「うん、トレボーに言われて行ってから何回か行ったよ」

「トレボーの立っているところから少し行った分かれ道を
　右へ行くと、　アルビダンジョンへの道になるが、
　左へ行く道もあるのを知っておるか？」

「んとー…」

トレボーはタダ立っているだけじゃなくて、
その先へ行こうとする人にどこへ行くのかいっつも聞いてる。
ワタシはあんまりトレボーと話したくないから、
素直に右の道へ行くけど、そういえば、左にも
立て看板があったような気がする。
たまに、そっちへ馬が走っていくのも見るなぁ…

「実はトレボーには、むやみに左の道へ興味本位で
　村人を行かせないように頼んであるのじゃ。」

「どうして？なにがあるの？」

「シドスネッターという、雪に覆われた神聖な場所があるのだよ。」


雪…。
魔法の授業の時ラサ先生に、話は聞いた事がある。
ティルコネイルでは、雪は降らないけど、いっつもふってくる雨が
もっと寒いと雪になるんだって。
真っ白できれいなんだっていってたなぁ。

「神聖だから行っちゃダメなの？」

「それもあるが、コヨーテという凶暴な動物がいてな、
　危険でもある。」

「白オオカミより怖い？」

「そうじゃな。」

「そうなんだぁ…」

でもオオカミももう怖くない。
だって、サキュバスを倒す時に行ったダンジョンには、
骸骨のオオカミがいたんだもん。

「大丈夫だよ、怖くないよ、じいちゃんの頼みってなに？」

強いっていったらなんだかわくわくする。
だって、強いなら魔符だって高く買ってもらえるし、
またわしわしってしてもらえる。

怖いより、興味があって、ワタシはじいちゃの顔を覗き見る。
だけどその目はワタシを見てない。
なんか迷ってるみたい。


「…いや、まだその時期ではないのかもしれん…」


じいちゃんの口からそんなつぶやきが聞こえた。
時期？なんだろう？
じいちゃんの頼みを聞くにはワタシは幼いんだろうか？
未熟なんだろうか？


「じいちゃん…？」


じいちゃんの暗い瞳が心配で、なんだか怖くて、
ワタシまで暗い声になる。

じいちゃんは少しあわてたように、ワタシの頭をわしわしわしと
いつもより二割り増しで撫でた。
心配するな　とでも言うように。


「どうも、年を取ると、忘れぽくなっていかん。
　頼もうと思っていたことは、この前済ませておいたんじゃった。」

なんだか、無理やりなごまかし方。
でもそれを問い詰めるとじいちゃがもっと困りそうだから、
それはワタシも嫌だから、
だから、
なにも聞かなかった事にした。

「じいちゃ！これー！」

まだ最近この村に来たみたいな子供が、
じいちゃに赤い魔符を見せながら
走りこんで来た。

「おお、これは赤キツネか、よしよし、ちょっと待っていなさい」

じいちゃはちょっとホッとしたみたいに、ワタシの前から
その子のところへ歩み寄った。

じいちゃの頼みが何なのか、トレボーがさえぎる先に
何があるのか、シドスネッターっていう雪がいっぱいの所は
何で神聖なのか、もっともっと聞きたかったけど…


「じいちゃー、また来るね。今度はホネホネの魔符持ってくるよ！」


さっきの事はなかったみたいにワタシが言うと、
じいちゃはいつもの笑顔でうなづいてくれた。

もっと強くなったら、じいちゃは言ってくれるかな。
教えてくれるかな。
コヨーテにも負けないって信じてもらったらいいのかな。


-----雪に閉ざされた場所かぁ…


ちいねぇなら知ってるかな。
おおねぇなら知ってるかな。

あんたはまだ知らなくていいの。　って言われそう。

でも気になる。
だって、じいちゃの瞳があんなに暗くなるんだもん。
なにかあるんだ。

強くならなきゃ。もっと。

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黒い翼の女神様。

閉じ込められて、ひとりぼっち。

つづきはこちら

その夜、ワタシは夢を見た。
いつもは、夢なんて見ないのに。

だけど、すごい不思議なんだけど、その夢はもうずっと前に
見たことがある気がする。

暗い場所。
そこに、黒い翼を持った黒い長い髪の女の人。
一筋の光がその人を照らして、
その人は、ずっと目を閉じていて、

そう、あのダンジョンの入り口で
剣をささげてひざまづく女の人みたいな。

モリアン

そう、女神モリアン。
じいちゃが教えてくれたんだ。
昔すごい魔族との戦争があって、
その時に人間を守ってくれた女神様だって。


ずいぶん前に聞いた話だから、
それにダンジョンの石造には色がないから、
翼が黒いなんてわかんないのに。
髪が黒いなんてわかんないのに。

お願いがあるって言ってた。
こっちへ来てくれって。
なんとか…ティ…なんとかが壊れるって。


なんだろう。これ。
変な感じ。



「ちい、どしたの？」

「ん、あ、ううん、なんでもないー。」

めずらしくちいねぇがワタシと一緒にいる。
ワタシには2人のおねぇちゃんがいる。
おっきいおねえちゃんは真唯。
ちっちゃいおねえちゃんは真結。

そしてワタシが茉由。一番年下。

なんで名前で呼び合わないかっていうと、
みんな音にしたら同じ響きだから。
じいちゃだけは、微妙な響きの違いで区別する。
さすがじいちゃ。

だから、ワタシもおねえちゃん2人を名前で呼ばない。

真唯ねぇちゃんは「長女」だからおっきいおねぇちゃん、
長いから「おおねぇ」。
真結ねぇちゃんは「次女」だからちっちゃいおねぇちゃん、
これも長いから「ちいねぇ」。

ワタシは物心ついた時には、もう「ちい」って言われてた。
だって一番ちっさいから。なんだって。


3人姉妹っていっても、めったに一緒にはいなくって、
おおねぇは、おっきい街で洋服屋さんになる為お仕事してる。
それに今ここにいるちいねぇは、ダンナさんという立場の
おにいちゃんといっつもどこかへ行ってる。

ワタシは一人ぼっちが多い。
淋しいって思った事はないけど、たまに、すっごいたまに、
暗いダンジョンで1人だと、怖いって思うこともある。
でもそれも別に悩むような事でもない。
だってそんな人ここにはいっぱいいるから。


最近特に、ちいねぇはどこかへ急に出てゆく。
しょっちゅうふくろう便が飛んできて、その後どこかへ行っちゃう。

「今日はどこもいかないの？」

「んー、ふくろう待ちなんだよね」

「そっかぁ…」

ちいねぇの作ったふかしたトウモロコシを食べながら、
昨日の夢を思い出す。
そういえば、ちいねぇは見たことあるのかな。

「ねぇ、ちいねぇ」

「んー？」


最近つれてきた、子熊にえさをやりながら、
うすい緑の目がワタシを見た。


「夢でね、黒い翼を持った女の人の夢って見たことある？」

「………」


子熊に、がしがし手をかまれてるのにも気がつかないぐらい
ちいねぇはワタシを驚いたような顔で見てる。


「ちいねぇ…手…」

「はっ？ぁっ！こらっ！」



じゃれてるだけなのに、クマは頭を叩かれて
ぎゅぅ…と申し訳なさそうに鳴いた。



「いつ見たの？」

「んと、昨日だけど、もっと前にも見たことあるような気がする。」

「そう…。」


ちいねぇがこんな真剣な顔をするのも久々だ。
いつだっけ、かなり長い間逢えなくて、
しばらく返ってこれないかも　って行った時もこんな顔した。


「それ、じいちゃんに話した？」

「ううん、言ってない。ちいねぇが見たことあるかなぁと思って
　んで聞いてみたの。」

「その話、いますぐじいちゃんに話しておいで。」

「ぇ、今から？」

「そう。今から。」



ちいねぇは、そう言うと、余分にふかしたトウモロコシを
ワタシのカバンに入れた。


「多分、じいちゃに話したら、色々と用事を頼まれるから、
　ご飯とか食べる暇もないだろうし、これを食べなさい。」

「……。」

「はやく、行くのよ。」

「ちいねぇ…。」


何か知ってるみたい。
なんかとんでもない事なんだろうか。
じいちゃんがなにか教えてくれるのかな。



「ローブもっていきなさい。きっと寒いから。」

「寒い？」

「そう。雪がたくさんあるところへいくからね。」


雪？
じいちゃんが昨日言ってた場所。



「シドスネッター…？」




その言葉にちいねぇはまた目をまん丸にした。
こっちまでまん丸になっちゃうよ。


「その場所知ってるの？」

「じいちゃんから昨日ちょっと聞いたの。」

「そう…それなら、じいちゃんも先に話そうとしたのかも…」


やっぱりちいねぇもなんか知ってるんだ。
それなら、ちいねぇの言うとおり、じいちゃんに聞いてみよう。

ちいねぇが用意してくれた、カバンを肩に下げた。


「これ着ていきなさい。あったかいから。」


いつも、ちいねぇが着てて、ちょっとうらやましかった
うさぎのローブだ。絶対貸してくれなかったのに。
うわー。ふわふわしてる。


「汚さないでよ…。」

「うん。ありがとう。いってくるね。」

「なにかあったらすぐに呼びなさいよ、いいわね？」

「うん。ふくろうさんに言えばいいよね？」


ちいねぇは黙ってうなづいた。
その顔を見て、なんだか覚悟が決まった気がした。
なんか大変な事がこれから起こるんだ。

女神の夢。


暗い暗いところにいる女神さま。
こんなちっちゃいワタシに何を伝えたいんだろう。



女神さまは教えてくれるかな。

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女神様の夢を見たのはワタシだけなのかな。
それもじぃちゃんに聞けば判るはず。
じぃちゃんは何でも知っているから。

それにしても。
ちぃねぇに色々持って行けと言われたから、カバンが重い。
聖堂からの坂道がこんなにきついとは思わなかった。
いつもなら走っているのに。

じぃちゃんの家の近くにある大きな木の下まで来て、そこはゴールまで
あと一息というところなんだけど、どうにも肩が痛くて、一旦カバンを下ろした。
ずっと前かがみの姿勢だとお日様も見えないよ。

「急げっていわれても、こんな荷物持つの始めてだし…」

つい独り言で文句を言ってしまう。
何がこんなに入っているんだろう？
いらない物まで入れてそうだから、ちょっと見てみよう。

そう思って、顔を上げると。

「あ…。」

見慣れた黒い犬が目の前の広場に入って来て、その後ろから
ワタシと同じぐらいの大きさの荷物を持った男の子が歩いてくる。

ワタシは地面に置いたカバンをひきずって木の陰に隠れた。
とっさに。なぜかわからないけど。
その犬と男の子をワタシは知っている。
でもなんか今は会いたくない。

カバンの陰にしゃがんで、見つからないように広場を覗いた。
犬は広場の真ん中で風のにおいをかぐように鼻先を空へ向けている。
男の子もつられるように足を止め、空を見上げた。

"おっきな荷物持ってるなぁ…"

と、犬がワタシの方に鼻先を向ける。

「わんっ！」

一声吼えて、一目散にこっちへ走って来た。
“あ、見つかった！”そう思って、立ち上がった瞬間。

「わぉんっ！」
「ひゃ！」

木の向こうから黒い犬が視界いっぱいに飛んできて、
ワタシは避ける事も出来ず、犬もろともカバンの上にしりもちをついた。

飛び掛って来た方は、親愛の情を最大限に表現しようと
しっぽを千切れんばかりに振りながら、ワタシの肩に足をかけてくる。

「ちょ、ちょ、まっ！」

興奮気味の犬を押さえて、飼い主を探すと、驚いたような、ふてくされたような
複雑な表情の男の子が重い足取りで坂を上がってくる。
ワタシだと判ると、「はぁ…」と息をついてその場にしゃがんだ。

「なーんだちびくろかよ…。あせった…。」
「な、なんだじゃないっ！これっ！なんとかしｔ」

人懐っこい犬なんだけど、力が強いから、立つ事もできない。
うちのひゅーろんも同じ種類だけどもっとちゃんとしてるのに…

しばらくワタシが顔をくちゃくちゃにされるのを見ていた彼は、
うつむいて少し笑うと、こほん！と咳払いをして威厳を込めた声で命令した。

「Back!　阿仁王！」
「！」

飼い主の声に阿仁王と呼ばれたその犬はすぐさまワタシから離れた。
そして彼の元に駆け寄り、今度は彼に向かって最大限に親愛の情を示す。
軽く阿仁王を見やり、頭をなでると、ワタシに視線を戻す。

「すげぇ荷物だな。」
「びっくりするじゃないのっ！阿仁王を止めてよー！」
「ああ、ごめんごめん。こいつ女の子好きだからさ。」
「……」
「ちびくろも女の子だと認められた証拠なんだから喜べよ。」

そういって、ニヤリと笑った。

彼は、豹丸。
ちぃねぇの「ダンナ様」である小彪にいちゃんの弟らしい。
らしい　と言ったのは、あまり会わないから。
でも会えば必ずワタシを「ちびくろ」と呼ぶ。

色が黒くて、小さいから　と言うけど、
豹丸だって色は黒いしやせっぽちだ。
挨拶をするぐらいで、あまり話しをしたことが無い。
それに、小彪にいちゃんとはまた性格が違うみたいだし。
ちぃねぇはけっこう可愛がっているみたいだけど。

「どっか行くのか？もってやろうか。途中まででも。」
「い、いいっ。そこのじぃちゃん所いくだけだからっ。」

ワタシがじぃちゃんの家の屋根を指さすと、豹丸も後ろを振り返り、
そしてまたワタシを見る。不思議そうに。少し首をかしげて。

「…オレも…じぃさん所行くんだけど。」
「…ぇ？」

そんなおっきな荷物を持って？
豹丸も？

同じ疑問を持ったのか、豹丸はワタシの隣にやってきて、
カバンを下ろしその上にちょこんと座る。
木の向こう側に体を伸ばして覗き込み、また反対側も同じように確認した。
そして、"耳を貸せ"と手招きする。

ちょっとだけ、どうしようかなと思ったけど、なんだかその秘密っぽいしぐさが
気になって、もしかして豹丸は何か知っているのかもしれないと思って、
素直に豹丸のほうに頭を傾けた。普段はしないよ。こういうときだから。

“ちびくろも夢を見たのか…？”
「豹丸も見たのっ？！」
「おまっ」

思わず声を上げてしまったワタシの口を豹丸があせったようにふさぐ。
だけどワタシは言葉が止まらない。

「ほうはるほっ？！ふめをひはほっ？！」
「ちょ、静かにしろってば…っ！」

内緒話にワタシは向いてないってちぃねぇに言われた事がある。
たぶんこれからは豹丸からもそういわれるだろうな。
口で謝れないから、手を”ごめんなさい”と合わせると豹丸の手が口から離れた。

「兄貴が言ってたまんまだな…お前、ｾﾞｯﾀｲ内緒話とかできないだろ…。」
「……。」

だけど責めるような感じはしない。
むしろ豹丸は楽しんでいるみたい。

「オレも…　って事はちびくろも見たんだな？黒い羽の生えた女の夢」
「うんうん。その人女神様だって聞いたよ？」
「他に何か知ってるか？」
「ちぃねぇに聞いたら、じぃちゃんところへすぐに行けって言われた…」
「ふむ…」

手をあごに当てて、考え込む。
あ、そうすると小彪にいちゃんに似てるなぁ…。

「ねぇねぇ、豹丸はどんな夢を見たの？」
「内緒。」
「えええええええ？！」
「ウソだよ。」
「えええええええ！！！！」
「ちびくろ、お前って面白い奴だなっ！」

そういっておなかを抱えて笑う。
阿仁王が不思議そうに首をかしげてワタシと豹丸を見比べた。
なんだかこういうからかい方をするのも小彪にいちゃんに似てる…。

「…兄弟ってやっぱり似るんだね…」
「お、おまえんところだって…はぁ、腹痛ぇ…めちゃめちゃ似てるよ。」
「そうかなぁ…」
「義姉さんもそういうところあるぜ？」
「へぇ…」

ひとしきり笑うと、豹丸はポケットをごそごそと探った。
「あれ…？どこだ…？」
「？」

「ちっさいから…どこに…あ、あった。」
「なになに？」
「これだよ。」

豹丸がワタシの前に手を広げると、そこには小さな赤い石のついた
イヤリングが１つ乗っていた。

「ちびくろは、アルビダンジョンと反対側のゲートのあるところ行った事あるか？」
「ううん…」
「オレさ、兄貴につれて行ってもらったんだけどさ…」

と、豹丸は小彪にいちゃんと行ったゲートの向こうの話をし始めた。
まっしろできらきら光る雪がいっぱい積もってる場所なんだって。
そこに、雪で作った沢山の人形（雪だるまっていうみたい）があって、
その中のひとつからこのイヤリングを見つけたんだって。

「誰のものなの？」
「さぁ…。」
「さぁって…。」
「これもってじいさん所へ行けって言われたんだ。」
「ワタシとはちょっと違うのかな…」
「わかんね。」
「助けてって言ってたんだよね…女神様が…」
「あー…そういやぁそういってたなぁ。」

豹丸が見た夢とワタシが見た夢は同じ夢みたい。
と言う事は、ワタシもこのイヤリングいるのかな？
ちぃねぇは何にも言ってくれなかったけど…

「これをもってたほうが話しが早いからって兄貴は言ってたからさ、
　別に無くてもいいんじゃない？」
「かなぁ…」
「ま、とにかく、じいさんところ行こうぜ。」

ぴょんとカバンから腰を上げて、カバンを肩にかける豹丸は改めてワタシの荷物を見た。

「何が入ってるんだ…？」
「わかんない…」
「いくつかこいつに持たせるか？」

と阿仁王を指す。

「何が入ってるか見てみるね。」
「義姉さんの事だから、くいもんじゃねぇの？」
「…かなぁ…」

カバンを開けると、豹丸のいうとおり、蒸したとうもろこしやら、
チーズパンやらがいっぱい詰め込まれている。

「うはー。お前小さいのによく食うんだなぁ。」
「……。」
「うそうそ。こいつに持たせよう。勝手に食ったりしないから。」

そう言って、自分のカバンから小さい布切れを出してワタシのカバンにある
お弁当を取り出して包む。

「よし、阿仁王、ちゃんと持つんだぞ？」
「わぉんっ！」
「よしよし。」

阿仁王の首元に器用に巻きつけると豹丸はワタシに言った。

「たぶん、これからオレとお前って一緒に旅すると思うんだ。
　それも兄貴から言われた。」
「へ？一緒に？」
「うん。言われたときは半信半疑だっただけど、ここで会ったって事はそれもビンゴだな。」

いきなりそういわれても。
なんで一緒だってわかるの？
っていうか、なんで豹丸は色々知ってるの？
ちぃねぇは何も言わなかったのに。

「とりあえず、じいさんところ行くか。」

ワタシのカバンをしっかり閉めて手渡してくれた。
さっきに比べたらちゃんとまっすぐ立てるぐらいの重さになってる。
阿仁王、重くないのかな？

「こいつ、オレより力あるし、頼りになるんだ。」
「ひゅーろんも持てるようになる？」
「とおもうよ？でもこいついるから大丈夫。行こう。」

そう言って豹丸がワタシに手を差し伸べた。
ワタシと同じ肌の色をしたその手を見て、
顔を見ると、小彪にいちゃんと同じ色の目が優しく微笑んだ。

「さ、早く。」
「うん。」

迷うなら導かれる方へ。
おおねぇが言ってた。
そうすれば自然と自分の進む道が見えるんだって。
一人ぼっちだと思っていたけど、そうじゃないみたい。

豹丸の手を取り、じぃちゃんの家への階段をゆっくり上がった。

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